最近、山梨県外のメディアでも「あけぼの大豆」が取り上げられたり、
東京都内のデパートの食品売り場でも「あけぼの大豆の枝豆」が登場するようになり、
知り合いから「出ていたよ!」と言われることが増えた。
その度に「あ~、あけぼの大豆の枝豆ですね。曙大豆の枝豆ではないですよ。」と
ちょっとわかりづらい返答をしてしまう。
どっちがいいとか悪いとか、美味しいとか美味しくないとかいう話以前に、
「違うものですよ。」ということだけは伝えるようにしている。
何が違うのか。
まずは言葉の定義として、
ひらがなの「あけぼの」大豆の枝豆を推奨している身延町によると、
「あけぼの大豆」は身延町のブランド大豆で、
身延町曙地区で採取した種子(種大豆のこと)を使用して身延町内で栽培されている大豆、
のことをいうらしい。
この種大豆にする「曙地区で栽培された大豆」のことを、身延町では「曙大豆」と漢字で表記して区別している。
したがって、「曙大豆の枝豆」というと、曙地区で曙大豆を種子にして栽培した枝豆のことで、
「あけぼの大豆の枝豆」というのは、曙地区ではない身延町のどこかで曙大豆を種子にした枝豆のこと。
種大豆は同じ曙大豆だが、栽培した地域が曙地区か、曙地区以外か、ということである。
では、栽培地域によって味に違いはでるのか。
もちろん。
栽培環境、土、作り手によって、同じ種大豆を使っても味に違いはでる。
ワインを思い起こしてみてほしい。
たとえば、ピノ・ノワール。
フランスのブルゴーニュ生まれとされている黒ブドウ品種で、ヨーロッパ諸国、アメリカやニュージーランド、オーストリア、南アフリカなど世界的に栽培面積が広がっているが、
ピノ・ノワールの特徴を最も良く出すことができる産地はブルゴーニュ以外にはないと言われている。他産地はブルゴーニュを目指し、それに追いつこうと努力を続けているらしい。
曙地区の標高500メートル以上の地域で栽培する曙大豆の枝豆のサヤは独特の匂いがする。
まるでチーズのようなお味噌のような、かすかに発酵を思わせるあの独特のサヤの匂いは、曙地区の土壌にいる微生物が作り出す匂いに違いない。
そして、その枝豆の味は、独特の深みと甘味がある。決して甘いだけではない、あとを引く濃い豆の味。手がとまらなくなる味。
決して人の手では作り出すことができない、まさに自然が生み出す味である。
標高はもちろんのこと朝霧の発生の有無、日照時間の違い、土壌の違い、朝晩の気温差の違い等々、すべてがその味に表れる。
私は曙地区特有の気候と土が生み出すその味を、できるだけ新鮮な状態で皆さんにお届けすることが、この曙地区で生まれ育った自分の役割かな、と思っている。
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